どうにもならない

どうにもならない人のライフハック

離婚したいと思う人と夫婦としてやっていく方法【3】

否定や反論をせずに最後まで聞く

前回の更新から間が空いてしまったが、カウンセリングを受けたその後のことを、時系列で書いていきたい。

カウンセリングで夫のAさんはカウンセラーに対して、「家庭に居場所がなくて、自分には存在価値がないのではないかと思った」と語った。

Aさんは仕事が忙しく、基本的に子供が起きている時間には帰ってこない。だから我が家はAさんがいない状態が普通で、たまにAさんが早く帰ってくると、自分はありがたいとか嬉しいと思うより「ペースを乱される」と感じていた。
多分、それはAさんにも伝わっていたと思う。Aさんは「好きなテレビ番組を見せてもらえなかったことに傷ついた」と言った。

Aさんが早く帰った日、子供が観ているチャンネルを変えようとしたので、「子供達はいつもその番組を観ているから」と、とめた。自分にとっては些細なことだが、Aさんはそれで「もうこの家に自分の居場所はない」と思ったらしい。

Aさんは特性上、自分が嫌な思いをしたことは、その時の状況などは一切すっ飛ばして「酷い扱いを受けた」という強い記憶だけが残る究極の被害者なのだ。
物凄く面倒だけれども、それは生まれ持ったものなので仕方がない。

問題は、Aさんがそんな思いを一切話さず、自分の中に溜め込んできたことだ。

Aさんはこれまで、《自分の気持ち》や《今、何を考えているか》を、ほとんど話すことがなかった。特にネガティブな感情については、「愚痴を言ってもなんの解決にもならないし、みっともない」と語ろうとしなかった。
だから自分はAさんがひたすらポジティブでタフな人間なのだと思っていて、普通の人のように傷ついたり、自信を失っていることに気づかなかったのだ。

Aさんが約束を破ったことで、自分は相当深く傷ついていた。
それでも夫婦としてこれからもやっていくのなら、もう傷つけられないように手立てをしなければいけない。Aさんとの関係を変えなければいけない。

その意味で、カウンセリングを受けたのは正解だった。
これまで知らなかったAさんの内面を少しでも知ることができたし、さらにお互いの気持ちや考えを知る上で、有効な《聞き方》をカウンセラーから教えてもらった。

それは「相手が話している間は、それに対して否定や反論をせずに最後まで聞く」ということだ。

これで話す方は安心して話せるし、聞く方も構えずに集中して聞くことができる。
意識してやらないとつい口を挟んでしまうので難しいのだが、お互い、この点をなるべく頑張って、自分の気持ちや考えを聞いてもらうようにした。

この過程で気づいたのは、Aさんが自分の気持ちや考えを話さないのと同じように、自分もAさんに対して、感じたことや考えたことを話さなくなっていたことだ。
いつからそうだったのか、もう思い出せない。自分とAさんは、子供や生活や仕事についての実務的な会話と、ニュースへの感想などの雑談的な会話ばかりで、自分や相手の内面に触れるような会話をしなくなっていた。

長年、そんな状態だったせいで、自分の気持ちや考えを話すことに最初は抵抗があった。だが「否定や反論をせずに最後まで聞く」というルールのおかげで、いくらか安心して話すことができた。
Aさんも自分も、そのルールをうっかり忘れて話し合いから大喧嘩に発展することが何度もあったが、それでも以前よりは距離が近づいたように思えた。

しかし、Aさんと夫婦としてやっていくのに必要な《自分がAさんから傷つけられない》という状態になるには、まだまだたくさんの障害があるのだった。