どうにもならない

どうにもならない人のライフハック

ロケットを飛ばすために必要なたった一つのこと

大学1年生の頃のこと。 ある晴れた秋の日、当時付き合い始めたばかりだったサークルの先輩のYさんが、 「ロケットを飛ばしに行こう」と誘いに来た。

Yさんは、こういう突拍子もない言動で周りの普通の人に迷惑を掛けるタイプで、自分に輪をかけて頭のおかしい人だった。

サークルの新入生歓迎コンパで、Yさんは胸ポケットにごく自然な様子でバナナを1本刺していて、それは何のために入れているんですかと聞いたら「たまに急にお腹が空くから」と真顔で答えた。コンパの帰り道、大して酔っているふうでもなかったYさんは突然「これ、登れる気がする」と言い残して狂った猿のような動きで道端の電柱に登って行き、サークルの女子達に悲鳴を上げさせていた。

後輩として知り合った自分は「この人は放って置いたらとんでもないことになる」という気持ちからなんとなくそばにいるようになり、そのうち付き合うことになった。しかし、Yさんの奇行は並大抵ではなくて、正直、この時にはもう疲れてしまっていた。

やる気なく「ロケットって何ですか」と尋ねると、Yさんは持っていた空のペットボトルを見せてきた。それに水とドライアイスを入れ、口をゴム栓で塞いで逆さまにして置くと、ロケットのように飛ぶはずだというのである。 その遊びは本か何かで読んだのかと聞くと、Yさんは「自分で考えついたんだよ」と得意そうに答えた。

そんな安全かどうか分からない遊びをさせる訳にはいかない。 当然自分は止めたのだが、Yさんは言うことを聞かず、結局押し切られて大学のグラウンドでロケットを飛ばすことになった。

近くに誰も居ないのを確かめ、ペットボトルを逆さまに設置して物陰にしゃがんで二人で見守った。結構長い時間のあと、「ボン」という音を立て、ペットボトルのロケットは、信じられないくらい高く飛んだ。

その日は本当に天気が良くて、青空に透明のペットボトルが光りながら飛んでいく光景は、なかなかに感動的だった。そして、これまでYさんの奇行を頭ごなしに否定していたことを少し反省した。

しかしその2日後、Yさんが粉塵爆発を起こしてみたいから小麦粉撒くの手伝って」と誘いに来たので、やっぱり甘い考えは捨てることにした。

Yさんとは色々あって、その6年後に結婚した。